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ことば遊び:食べ物の立場に立って呼んであげよう

私が通っていた大学は、ことば好きというかことばオタクというか、そういう人たちの集まっているところだったので、ことば遊び的なものが周りにあふれていました。

あれは私が大学1年の頃。合唱団の練習の帰りに、西ヶ原の大学から巣鴨駅に15人くらいで向かっていました。三井銀行(当時)の裏手を通りかかったころだったことまで記憶していますが、先輩方が、

「『焼き魚』は焼く人間の立場に立った言い方だ。焼かれる魚の立場に立って『焼かれ魚』と言ってあげよう。」

なんて(バカな(笑))ことを言いだし、次々と類例を挙げていきました。そのときどんな例があがったかはさすがに覚えていませんが、だいたいこんな感じです。



煮られ魚/ゆでられ卵/目玉焼かれ/おにぎられ/おむすばれ/焼かれ肉/茶碗蒸され/...



まあ、中には訳がわからんものもありますが(笑)、この話をのちに私は授業で「過去分詞の形容詞用法」を説明するときに使うようになりました。



そして、これは今でも忘れられないのですが、あのとき出された例の中の最高傑作はこれでした。

芋の煮られころがされ




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NHKにおける企業名・商標名の扱い

NHKは公共放送なので、企業名・商標名はご法度、というのが広く人々が認識しているところだと思います。実際には、以下にも書くように、そうとも限りません。確かに、放送する内容が実社会とつながっている以上、企業名・商標名を一切抜きに番組を制作するというのは、極めて難しいように思われます。

現在のNHKの番組を見ていると、企業名・商標名の扱いは、番組のジャンルによって異なっているように見受けられます。


●ドラマ
通常、実在の企業名・商標名は登場しません。数年前、私が「朝ドラヲタ」いや、正確には「てるヲタ」だったころを思い出してみます。2003年~2004年の「てるてる家族」は、実話をベースとしたフィクションということもあり、昭和20~40年代の実際の社会を背景としたものでした。その中で、「宝塚歌劇団」は、主人公が目指すという重要な役割を果たしており、そのままの名前で登場しました。また、「宝塚音楽学校」の実際の制服も使われていました。

そのほかの実在する企業(池田銀行、資生堂、日清食品、阪急電鉄など)は、企業名が出ないか、架空の企業名にされるかしていました。原作でそのまま出ていた池田銀行は「北摂銀行」に、資生堂は「しょうせい堂」に変えられました。ちなみに、同ドラマでは、実在の人物と誤解されるとの理由で、放送直前に急遽、電器店主の名前が変更になるというハプニングもありました。

民放のドラマでは、「協力」「撮影協力」などとして、実在の企業名がテロップに出ることがよくありますが、NHKのドラマでは、原則としてそれはないようです。「てるてる家族」でも、日清食品から資料提供などを受けていたと思われますが、テロップに出たのは、当時まだ存命だった、創業者の安藤百福氏の名前でした。(「宝塚歌劇団」は出ていましたが。)

2004年の「天花」(突っ込みどころ満載のドラマで某巨大掲示板が盛り上がりました)でも、仙台に実在するかまぼこ店の協力を得ていましたが、店の名前ではなく、店主の名前がテロップに出されました。そういえば、「天花」では、京王・井の頭公園駅でのロケの際に、入口の駅名についている「KEIO」のロゴが隠されていて、「そこまでやるかね。」と話題になりました。



●報道・ドキュメンタリー
ニュースで企業名が必要に応じて登場するのは当然ですが、ドキュメンタリーなどでも頻繁に見かけるようになりました。一つのターニングポイントだったと思われるのは「プロジェクトX~挑戦者たち~」でしょう。NHKで、特定の一企業の開発物語を、企業名も商標名も入れて放送するというのは、それまであまり例がなかったのではないでしょうか。それまでならば、「ある大手電機メーカーの家庭用ビデオデッキ開発の物語」だったものが、「日本ビクターのVHS開発の物語」のように企業名・商標名が堂々と明かされるようになったのは、この番組以降のような気がします。

報道・ドキュメンタリーで、企業名が必要不可欠とも言えないようなときには、例えば「大手家電量販店を取材しました。」のようなナレーションが行われます。ただ、その場合でも、インタビュー相手の肩書のテロップでは企業名が入っていることがあるのがちょっと不思議です。

また、「クローズアップ現代」だったと思いますが、ナレーションでもテロップでも「出版社」としか示していなかったものの、レポーターが訪問する場面の映像では、しっかりと社屋の「主婦の友社」という看板が映っているという・・・。こういうの、結構多いです。映像は「風景」なので、OKなのでしょうか。



●娯楽番組
昨年4月から9月まで放送されたソクラテスの人事というバラエティ番組は、実在の企業の人事担当者(各回3社)が、ゲストの芸能人たちに、過去に実際に出された入社試験を課し、誰を採用したいかを決するという番組でした。そこでは、企業の実名が出されるばかりか、会社紹介の映像まで流れました。

「サラリーマンNEO」には、社員食堂を紹介する「世界の社食から」というコーナーがありますが、報道・ドキュメンタリーにも時折見られる、「音声は企業名なし、テロップは企業名あり」方式がとられています。例えば、こちらでは、ナレーションでは「カメラや複写機などで知られる大手精密機器メーカーを訪ねました。 」と言いつつ、テロップに「キヤノン(東京・大田区)」と出ています。さまざまな職場で働く人を紹介する「はたらくおじさん」のコーナーでも扱いは、こちらのように、同じです。

最近すごいなと思うのが、お笑い番組の「爆笑オンエアバトル」。ネタの中に、「ローソン」だとか「ユニクロ」だとか「佐川急便」だとか、企業名、商標名がバンバン出てきます。それを抜きにしてしまうと笑いが成立しない、という理由によるものと思われますが、これは過去のNHKではちょっと考えられなかったことです。



過去のNHKといえば、娯楽番組では企業名・商標名は一切ご法度(たぶん)。なにしろ、山口百恵の「プレイバックPart2」にある ♪緑の中を 走り抜けてく 真っ赤なポルシェ♪ という歌詞を ♪真っ赤な車♪ と言い変えさせたくらいですから。(もっとも、後には原歌詞どおりに歌うようになったようですが。)

いや、もっとすごい、というより不可解だったのは、松本伊代の「センチメンタル・ジャーニー」。サビの部分の ♪伊代はまだ 16だから~♪ は、「伊代」が個人の宣伝になるとかいう理由で、♪わたしまだ 16だから~♪ に変えさせられたのでした。



昔の基準でいくと、「グループの宣伝」になってしまう、♪パッ、パッ、パッ、パッ、パッ、パッ、パフューム♪ なんて、絶対に流せませんね。(実際には、一昨年「トップランナー」にPerfumeが出演したしたときに、オープニングのBGMでかかっています。)




『日本人の知らない日本語』

このブログを始めたとき、「仕事柄、ことば関係の話題が多くなりそうですが」なんて書いた割には、最近は全然違う方向に向かっていますが(最初のエントリーの最後の行が暗示してる(笑))、たまにはことばの話もしたいと思います。

                    ☆

少し前から、書店に行くたびに気になっていたこの本。平積みになっているので、話題の本なのでしょう。蛇蔵&海野凪子 『日本人の知らない日本語』。日本語学校を舞台としたコミックエッセイです。
090810_1日本人の知らない日本語表

こういうのは、メディアファクトリーが得意だが・・・と思ったら、やはりそうでした。けらえいこの『セキララ結婚生活』をはじめとする結婚生活シリーズ、大田垣晴子の『セイちゃん』、小栗左多里の『ダーリンは外国人』シリーズと、「おっ、面白そうだな」と思ったコミックエッセイはことごとく、メディアファクトリーからの出版だったりします。

裏表紙に内容の一部が紹介されています。
090810_2日本人の知らない日本語裏

日本語教師の海野凪子さんが原案で、漫画家の蛇蔵さんが構成・漫画を担当というものなので、日本語教室のありのまま(まあ、デフォルメもあるでしょうが)が描かれていると見ていいでしょう。

他の日本語教師の方や、日本語の専門家の方がどう読まれるかはわかりませんが、私としては、非常に楽しめました。(一気に読んでしまった。)

私のように、ことばを研究・教育することをなりわいとしていると、この手の本には気をつけないと、「もう、嘘ばっかり書いて!」とか、「そういう偏った見方を垂れ流すな!」とか、「わかってねーなー!」とか、「うーん・・・期待はずれ。」とか、いろいろとフラストレーションがたまることもあるのですが、この本は読後感も爽快でした。

内容は主に、留学生からの素朴だが手ごわい質問や、思いも寄らない留学生の反応に悪戦苦闘する主人公の日本語教師の姿を描いています。それが日本人である私たちにとっては、軽い驚きであったりするわけです。さらに、単語の由来であるとか、敬語の使い分けといった知識も面白く織り交ぜているので、近年の日本語ブームにも乗って、売れているのだと思います。

この本のいいところは、欧米からアジアまで、いろいろな国からのいろいろなバックグラウンドを持った留学生が登場すること。外国人といえば欧米人のことだと思ったり、アジアといえば中国と韓国しか思い浮かばないような人には、ぜひ読んで欲しいと思います。

また、外国語といえば英語、と思っている人にも読んで欲しいものです。痛快なのは、日本ではなにもかも逆だ!ということに苛立ったアメリカ人留学生が、「文字を書く方向、こんなのあり得ない!」と言ったのに対して他の国からの留学生が、「そこは賛成できない。英語が標準だと思うのはまちがいだ!!」と言い放つところ。アメリカ人じゃなくて、日本人でも英語中心の思考をする人がいますからね。

それから、主人公と留学生たちとの信頼関係みたいなのが垣間見れるのも清々しい。留学生たちは、時に頓珍漢なことをしながらも、愛すべき存在として描かれています。

ことば好きにも、そうでもない人にも、オススメの1冊です。

                    ☆

蛇蔵&海野凪子
『日本人の知らない日本語』
メディアファクトリー
2009年
880円(税別)




「外来語の表記」(第1表)(その2)

前回の続きです。

 ●「ティ」 ティッシュペーパー,ミーティング,ミルクティー,パーティー,シティー
 ●「ディ」 ディスコ,ディーゼル,ディスカウント,ボディー,ビルディング(「大名古屋
       ビルヂング」という昔風の表記も残っていますが、現代では一般的では
       ないでしょう)

この2つは、それぞれ [ti], [di] という音を表していると考えられますが、表記・発音ともにほぼ定着しているとみていいのではないでしょうか。

ただし、外国語の [ti], [di] に類する音が、「テ」「デ」で定着した例として、「ステッキ」「ステッチ」「デジタル」があり、「チ」「ヂ(=ジ)」で定着した例として、「チーム」「チケット」「プラスチック」「ラジオ」「ラジウム」があります。「ディーゼル」も、たまに「ジーゼル」という表記を見かけます。

かつて、「ラジオ」を「ラヂオ」と表記したのは、原音が [d] 音なので、「ダ行」の文字で表すべきだという意識が働いたことによるものと思われます。「大名古屋ビルヂング」もその類例です。実際には「ラヂオ」と書こうと「ラジオ」と書こうと、発音は同じなのですが(一部の方言を除き)。

「外来語の表記」でも、注として、「チ」「ジ」「テ」「デ」と書く慣用がある場合はそれによる、との記述があります。ただし、その中で例として挙げられている「キャンデー」については、今では「キャンディー」という表記の方が多いのでないでしょうか。Googleで検索してみました。

  キャンデー  約350,000件      キャンディー  約2,870,000件

圧倒的に「キャンディー」が多いですね。「年下の男の子」を歌っていたのも「キャンデーズ」ではなく「キャンディーズ」でした。

比較的新しく借用された語では、「ティ」「ディ」と発音し、表記するのが一般的ですが、年配層で、「ティ」「ディ」が発音できずに「テ」「デ」などになる人がまだいるかもしれません。私が中学生のころ、「ディスコ」を「デスコ」と発音している大人が結構いましたし、電電公社が民営化してNTTになったときに、「エヌテーテー」と発音していた年配の政治家・財界人が多数いました。

ちょっと面白いのは、KDDIを「ケーデーデーアイ」と発音することにものすごく抵抗感のある人でも、「リポビタンD」は「リポビタン・デー」と発音することが多いようだということです。これも、「デジタル」の「デ」と同じで、すでに定着してしまっているということなのでしょう。CMでも思いっきり「リポビタン・デー!」と言ってますし。

なお、同じく「タ行」の「トゥ」「ドゥ」は第2表に出ています。



 ●「ファ」 ファイト,ファン,ファースト,ファミリー,アルファ,ソファー
 ●「フィ」 フィッシュ,フィルター,フィットネス、フィンランド,フィーリング,トロフィー
 ●「フェ」 フェリー,フェア,フェスティバル,フェーン現象,カフェ,パフェ
 ●「フォ」 フォーク,フォーム,フォアボール,フォッサマグナ,パフォーマンス

これらの表記は、通常は [u] しか後続しない「フ」の子音 [f] (正確には[ɸ])のあとに、[a], [i], [e], [o] が続いた [fa], [fi], [fe], [fo] を表しています。(しつこいようですが、簡略表記をしています。正しくは日本語の「フ」の子音は、英語などの [f] とは異なります。)

年配の方には「フア」「フイ」「フエ」「フオ」と発音する方がいらっしゃるかもしれませんが、若年層では、おおむね、発音・表記とも定着しているように思います。ただ、語によっては

 「フィルム」/「フイルム」  「ファン」/「フアン」

のように、両方の語形が併存しているものもあります(「外来語の表記」でも注2で言及しています)。Googleで検索してみました。
  
  フィルム  約20,800,000件     フイルム  約3,120,000件

面白いことに、「富士フイルム」は、社名表記は「フイルム」ですが、同社のウェブサイト上で、一般名詞としては「フィルム」と表記しています。なお、私は「フイルム」と4音節で発音しているので、書くときも「フイルム」です。

「ファン」を「フアン」と言ったり書いたりする人は今では少ないと思いますが、私が子供のころは、年配の人が若い人に向かって「ピンクレデーのフアンなのかい」(「フアン」は「ア」にアクセント)と尋ねる場面があったように思います。

「外来語の表記」では、注1として

  「『ハ』『ヒ』『ヘ』『ホ』と書く慣用のある場合は、それによる。」

と記されています。かつては、外国語の [fa], [fi] [fe], [fo] に類似した音が、日本語では、「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」に置き換えられる場合も多かったようです。駅の「ホーム」はその名残。英語のplatformの略なので、今なら「フォーム」となりそうなところですが、相変わらず「ホーム」です。そのため、駅のホームのことをhomeと書く学生があとを絶ちません。「セロハン」もそうです(こちらは「セロファン」もあって、併存している状態です。)

音響音声学で登場する「フォルマント」も、かつては「ホルマント」と表記されており、今でもそう表記されることがあります。専門用語なので、ある程度定着してしまっているのかもしれません。



ここまでは、「本来の日本語の音体系では結びつかなかった子音+母音の組み合わせ」でしたが、次は、第1表で唯一登場する“拗音系”の表記です。

 ●「デュ」 プロデューサー,デュエット,デュークエイセス,マウンテンデュー

これは、[dju] という発音を表していると考えられます。

日本語では、「ダ行」の拗音「ヂャ、ヂュ、ヂョ」は、「ザ行」と合流してしまい「ジャ、ジュ、ジョ」と同じ発音になります。そのため、[dju] という発音は存在せず、外国語の [dju] に類する音は、日本語に入ると、「ヂュ」すなわち「ジュ」と発音されていました。バレーボールの試合などで耳にする「ジュース」は、飲み物の「ジュース」(英語のjuiceから)とは全く関係なく、もとは英語のdeuce。今だったら「デュース」と読まれていた可能性があります。実際、「デュース」という表記も検索をかけるとヒットします。ドイツの都市の「デュッセルドルフ」も、私が中学生のころは「ジュッセルドルフ」と表記されていました。

いっぽう、比較的最近取り入れられた外来語では [dju] という発音がごく当たり前に行われています。例えば、 英語のproducerやduetに由来する外来語を「プロジューサー」「ジュエット」と発音したり表記したりすることはあまりないと思われます。それでも検索すると、「プロジューサー」が少数ながらヒットするのが興味深いところです。

   プロデューサー  約8,450,000件      プロジューサー  約7,010件

年配層では「デュ」がうまく発音できない人もいるようです(若年層にもいるかもしれません)。ちなみに、私の母は、1988年のアメリカ大統領選挙の時に、民主党の候補者だった「デュカキス」が言いにくいと言っていました。「デュークエイセス」は伸ばすから言える、とも言っていました。

第2表についてはまたいずれ。




「外来語の表記」(第1表)(その1)

今回は、外来語の発音とその表記について、書きたいと思います。



他言語から単語を借用するときには、原語の発音に近い、自言語の音で発音するのが普通です。ただし、単純に「外国語のこの音は、日本語のこの音に置き換えられる」と言うことはできません。

たとえば、英語などの [ti] に類する音は日本語では「チ」と置き換えられることもあれば、「テ」となることもあれば、「ティ」になることもあります。

たとえば、team はふつうは「チーム」で、これを「ティーム」と言ったり書いたりすると、ちょっとわざとらしい感じがしそうです。逆に、tea は、ふつうは「ティー」で、これを「チー」とか「テー」とか言ったり書いたりすると、ふざけているか、ユーモラスに昔風を表しているような印象を受けます。tissue paperは「ティッシュペーパー」が普通ですが、「テッシュペーパー」と言う人も(特に年配層に)見受けられます。「チッシュペーパー」と言う人は、昔はいたようですが、今ではかなり少ないと思われます。

これらは、主として、その単語が借用された時期による違いと考えられます。

                    ☆

外来語をどう表記するかの「よりどころ」として、内閣告示・内閣訓令による「外来語の表記」というものがあります。

この告示の不思議なところは、たとえば、細則が次のような記述で満ちているところです。

  「シェ」「ジェ」は、外来音シェ、ジェに対応する仮名である。

「外来音シェ、ジェ」というのがどんな音を表すのか、これではわかりません。てゆーか、この文は単に、何らかの外来音を表すときに「シェ」「ジェ」という表記を用いる、と言っているだけです。ですから、それぞれの仮名表記がどんな外来音を表すのかは、各自が判断するしかありません。(そんな内閣告示ってありか??)



その「外来語の表記」では、外来語以外でも普通に使われる仮名表記(「カ」とか「リャ」とか「パ」とか「ン」とか)とともに、次の仮名表記を「第1表」に掲げています。「第1表」に掲げられたものは、「外来語や外国の地名・人名を書き表すのに一般的に用いる仮名」なのだそうです。

              シェ
              チェ
  ツァ          ツェ  ツォ
      ティ
  ファ  フィ      フェ  フォ
              ジェ
      ディ
          デュ



「外来語の表記」にも用例は挙げられていますが、それとは別に思いつくままに挙げてみます。

 ●「シェ」 シェーバー,シェルター,シェリー酒,昭和シェル石油,ポシェット,ポルシェ
 ●「ジェ」 ジェル,ジェスチャー(古くは「ゼスチャー」と書くことが多かったようです),
       ジェームス・ボンド,ジェット機,ジェニーはご機嫌ななめ,オブジェ
 ●「チェ」 チェーン,チェリー,チェ・ゲバラ,チェ・ジウ,ドルチェ,ニーチェ

このあたりは、表記・発音とも完全に定着しているように思います。「シェ」「ジェ」「チェ」がそれぞれ [ʃe], [dʒe], [tʃe] という発音を表すことには異論はないでしょう。(注:音声記号は可能な限り簡略表記しています。)

古くは「シェ」「ジェ」は「セ」「ゼ」に置き換えられました。その名残が「ミルクセーキ」で、これはこの語形で定着して今に至っているものです。「マックシェイク」の「シェイク」は、「ミルクセーキ」の「セーキ」と語源は同じ(英語のshake)ですが、発音・表記が見事に異なります。

また、「富士通ゼネラル」という会社がありますが(「ゼネラル」は英語のgeneralから)、これも今なら「ジェネラル」と表記されそうです。「ゼネスト」という形でも残っています。「ゼリー」(英語のjellyから)もそうですね。Tom and Jerryは「トムとジェリー」ですが。

「外来語の表記」でも、「『セ』『ゼ』と書く慣用のある場合は、それによる。」との注があり、「ミルクセーキ」「ゼラチン」が例として挙げられています。

ところで、「チェ」は古くはどのように置き換えられていたのでしょう?「チエ」でしょうか?



 ●「ツァ」 モッツァレラチーズ,モーツァルト(ただし、私は「モーツアルト」と書きたいところ。
       以下の記述を参照),スフォルツァンド,ピアッツァ
 ●「ツェ」 フィレンツェ,シャンツェ,レッド・ツェッペリン,クライス・ツェン(巣鴨にあるパン屋)
 ●「ツォ」 カンツォーネ,スケルツォ,ロレンツォ・ディ・メディチ,ジョン・健・ヌッツォ

この3つは、[tsa], [tse], [tso] という音を表していると考えられますが、英語にはあまり存在しない音配列で、主にドイツ語・イタリア語などからの外来語に使われます。人名・地名を除くと、分野が音楽、料理などに偏っていて、頻度も高くありません(上の例を見ると、無理やり集めてきた感が否めません)。そのため、「シェ」「ジェ」「チェ」と比べると、なじみが薄い人が多いかもしれません。

「ツァ」「ツェ」「ツォ」がどのくらい普及しているか、「モーツァルト」と「モーツアルト」、「フィレンツェ」と「フィレンツエ」をGoogleで検索してみました。(引用符" "で挟むと、完全に同一の表記のものしかヒットしないようです。そうしないと、気を利かせて両方の表記のものを出してきます。)

  モーツァルト  約4,530,000件     モーツアルト  約547,000件
  フィレンツェ   約1,770,000件     フィレンツエ   約34,500件

「モーツァルト」:「モーツアルト」が約8:1なのに対し、「フィレンツェ」:「フィレンツエ」は約51:1と、圧倒的な大差をつけています。

これは、後者がたいてい [-tse] と発音され、[-tsue] のように [u] を入れることがあまりないのに対し、前者では、 [moːtsuaruto] と、[u] を入れて発音する人も多いので、それをそのまま表記した「モーツアルト」という書き方が結構行われている、ということなのではないでしょうか。果たして、実際に「モーツァルト」 [moːtsaruto] と、[u] を入れずに発音している人はどのくらいいるのでしょう。

私の推測ですが、実際には [-tsua-] と発音しているのに、この「外来語の表記」で「ツァ」の表記がお墨付きを得たために、「モーツァルト」を“正式”の表記として認識している人が多いのではないかという気がします。

「外来語の表記」では、「ツァ」の例として「モーツァルト」を掲げていますが、上記のようなことを考えると、それが適切だったのかどうか、疑問が残ります。もちろん、「留意事項」として、

  「以下の各項に示す語例は、それぞれの仮名の用法の一例として示すもので
  あって、その語をいつもそう書かなければならないことを意味するものではない。」

とは記されているのですが・・・。例として挙げるのは、「フィレンツェ」のように、実際にその表記が表す発音が定着しているものに限るべきだったのではないでしょうか。

なお、「ツァ」「ツェ」「ツォ」が第1表にあって、「ツィ」が第2表に回っているのは、外国語で [tsi] のような音連続を持つ語が日本語に入ってきたときには、発音上も表記上も「チ」となるのが一般的だからでしょう。

(つづく)




上野まな - Feeling
上野まな - My Silly Girls
プロフィール

こばあつ

Author:こばあつ
札幌市出身、埼玉県南部在住。美術大学で英語を教えています。
◆専門◆音声学(主に英語の音声教育、発音表記など)。広くことばやことばの音に関する楽しい話が好きです。
◆趣味◆
【旅行】鉄道旅行と食べ歩き。
【うたを聞くこと】<好きな歌手>上野まな、Perfume、辛島美登里、一青窈、いきものがかり、福原美穂、RYTHEM、太田裕美、溝渕文。<気になる歌手>花菜、山崎葵。ちなみに合唱経験者です。初期の木下牧子作品は思い出深く好きです。
【その他】<好きな女優>上野樹里、宮崎あおい、臼田あさ美、市川実日子、笹峯愛、深津絵里、石原さとみ、松本まりか、ほか

★アメブロで「こばあつの雑記帳(別館)」やってます。
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