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「美大生ならではの英語の取り組み方などありますか?」

「ザ・インタビューズ」での回答を再掲載します。

                    ☆

----美大生ならではの英語の取り組み方などありますか?


「美大生ならでは」ですか。そうですね、美大生だからといって特別な勉強法があるわけではありませんが、美大生ならではの強みを英語学習に活かすことはできそうです。

私が美術大学で教えていて思うのは、美大生はやはり概念を「映像(イメージ)」でとらえるのが上手だということです。逆に、言語だけで構築された世界は苦手な人が多いような印象を受けます。もちろん、大学の教員としては、美大生にも言語だけで構築された世界を泳げるようになってほしいのですが、とりあえず、英語学習という点では「概念を映像でとらえる」という得意な部分を活かしてみましょう。

例えば、単語の意味を覚えるとき、日本語の訳で覚えている人は多いと思います。簡単な単語ならいいのですが、微妙な意味合いを持っている単語が英語にはたくさんあって、日本語の訳で覚えるのはけっこう大変です。

そこで、「概念を映像でとらえる」という得意技を使ってみましょう。つまり、単語を覚えるときに、辞書に書いてある日本語の訳をそのまま覚えるのではなく、頭の中でイメージとしてとらえて、そのイメージを英単語と結び付けるのです。

英語に「glitter」という単語があります。「ぴかぴか光る、きらきら輝く、きらめく」といった訳が辞書には出ていますが、頭の中でそれをイメージにして、「glitter」の音と頭の中のイメージを直接結び付けてみてください。1回ではうまく結び付かないかもしれません。何度も「glitter」とつぶやきながらイメージしましょう。「グリッター」と聞こえたら自然と頭の中がキラキラするような気になればしめたものです。この方法だと「日本語に訳しなさい」と言われたときにすぐに日本語の訳が出てこないかもしれませんが、頭の中に沸き起こったイメージを自分の日本語にすればいいのです。

単語や文を単語帳やノートに書いて覚えるときも、いっそのこと日本語の訳ではなく、自分でその単語や文の意味を表す絵を描いてみてはどうでしょうか。勉強も少しは楽しくなるかもしれません。

もし英文法をおさらいする機会があったら、ぜひイメージでとらえて欲しいと思います。これは美大生だけではなく、どんな英語学習者にも必要なことなのですが、美大生はむしろ他の人よりもこの点では有利かもしれません。ここでは詳しく説明できませんが、例えば現在完了を「完了、結果、経験、継続」という分類を表すレッテルで覚えるのではなく、具体的にどんなイメージを持っているのかを考えてみる(分からなかったら英語の得意な人に聞いてみる)といいと思います。

このほかに、これは美大生に限ったことではありませんが、自分の専門分野の話を英語で言えるようにしておくことをおすすめします(最低限、自分が美大で学んでいることを紹介する英語を考えて覚えておくといいでしょう)。海外へ出た時、あるいは海外から来た人が美術関係に詳しい人だった時、きっと話がはずむと思います。

美大生の中には英語にコンプレックスを抱いている人もけっこういますが、私がこれまで教えてきた経験から言うと、美大生はむしろ外国語学習に向いていると思います。それは、美大生は「何かを表現する」ことに対する意識が非常に高いからです。表現する中身がないと、外国語学習はつまらないものになります。ぜひ、「何かを表現するために英語を学ぶ」という気持ちで取り組んでみてください。

johnlennongamitanihon.jpg
ジョン・レノンが、絵とローマ字を使って日本語を学んだスケッチブックを本にしたもの。




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いつからポップス系の歌手は「ガ行鼻濁音」を使わなくなったのだろう?

日本語の「ガ行」の子音は、語頭では《有声 軟口蓋 破裂音》[g] で発音されますが、それ以外の場所では《有声 軟口蓋 鼻音》[ŋ] で発音されるのが“標準”とされており、放送局のアナウンサーは厳しく指導されます(のはずです)。この、鼻音で発音されるガ行は「ガ行鼻濁音」あるいは単に「鼻濁音」と呼ばれています。

例:
 「がっこう」 の 「が」 は語頭なので [ga]
 「しょうがっこう」 の 「が」 は語頭以外なので [ŋa]
 「こうとうがっこう」 は 「こうとう」+「がっこう」 と分かれて 「が」 は語頭扱いで [ga]
 「だいがく」 の 「が」 は語頭以外なので [ŋa]

このほかに助詞の「が」も [ŋa] となります。また、擬音語や擬態語(例:ごろごろ)および数詞としての「五」は語頭以外でも [g] などといった例外があります。

いま上に書いたのはアナウンサーなどが規範とする発音であり、実際には地域差がかなりあります。東日本、特に東北地方の多くではこの通りの発音をしますが、西日本の多くではこのような使い分けがなく、語頭以外でも「鼻濁音」は使わずに破裂音 [g] で発音します。また、かつてこの使い分けがあった地域でも、若年層(というか中年から下)では「鼻濁音」を使わない傾向が強くなってきています。私自身(北海道出身、1965年生まれ)はもともと鼻濁音を使わないのですが、大学で合唱団に入り、歌うときは鼻濁音が必須だったので気を付けるようになりました。

ちなみに、私の「語頭以外のガ行」は、大学2年のときに言語学の先生に指摘されて初めて気付いたのですが、実は鼻音でもなければ破裂音でもなく、[g] の調音点における閉鎖が完全に行われずに摩擦音と化した《有声 軟口蓋 摩擦音》[ɣ] です。少なくとも、発音を意識せずに話しているときはそうです。それどころか、速い発話などではさらに調音点におけるせばめが広くなって、《有声 軟口蓋 接近音》[ɰ] になるときすらあります(そういう発音の人は私以外にもかなりいます)。ちなみに、学生の前で説明するときなどは、私も意識的に鼻濁音を使うことが多いようです。

そんなわけで、個人的には「歌唱中の鼻濁音使用の有無」には非常に敏感なのですが、好きなポップス系歌手のほとんどが鼻濁音を使っていないという現実もあり、「気になるけど気にしない」という態度で歌を楽しんでいます。

                    ☆

さて本題です。ここからは手抜きで申し訳ありませんが、先日ツイッターで一人つぶやいたことを一部修正して転載します。

☆いまや若いポップス系の歌手でガ行鼻濁音を使う人は吉岡聖恵(静岡県生まれ、神奈川県育ち、音楽短大出身)のような例外を除けばほとんどいないという現状だが、私が高校生の頃まではアイドルも鼻濁音で歌っていたような気がする。たぶん歌のレッスンのときに指導されていたんだと思う。

☆かつて「ガ行鼻濁音」を使わない歌手の代表としてユーミンが挙げられることが多かった。「どんな~うんめい~、が~」(「翳りゆく部屋」)と思いっきり破裂音にしているところとか。当時のシンガーソングライターは歌謡曲の歌手のようなレッスンを受けなかったからなんだろうと思う。

☆日本の歌謡界でいつ頃から「ガ行鼻濁音」を使わない方が一般的になったのか興味がある。今度YouTubeをあさって調べてみよう。

☆辛島美登里さん(鹿児島県出身)の場合は、かつてはガ行鼻濁音をほぼ完璧に使っていたのが、ファンハウスから移籍したころから使わなくなったというのが興味深い。ガ行鼻濁音はファンハウス時代のプロデューサーの指導だったのだろうか?

☆...とかいうことを、上野まなちゃんの歌を聞きながら思って、歌を聞くのを中断していろいろ調べだしてしまう。これだから音声学者は...。



ちなみに、上野まなちゃん(兵庫県出身)はかなりの割合で語頭以外の「ガ行子音」を摩擦音にして歌っています。接近音にしているときもあります。でも私が好きだからよいのです(笑)。






「音声学とJポップ」というカテゴリーを設けました

最近、このブログの記事の左側の欄に示されている「カテゴリ」を整理し、それまで「音声学」として一括してあったものの一部を「音声学とJポップ」というカテゴリに独立させました。そして、久しぶりにその手の記事を書いたところ予想外に反響があったので、調子に乗ってこれまで音声学の授業などでネタとして用意していたものを紹介してみようかなという気持ちになりました。

これまで書いたのは以下の記事です。

「一青窈の「ヤ行」が摩擦音になるという話」2009.8.12
 これはかなりアクセスがあったとみられる記事です。というのも、「一青窈 おやひゅび」のような検索ワードで来た方が多数いらっしゃいました。みんなあの発音気になっていたのね、というわけで、今回、動画へのリンクを入れてみました。

「パフュームの「フュ」の音声学的考察」2010.3.5
これは歌の発音ではなくユニット名の発音について書いたものです。「パフューム」ではなく「パヒューム」と“間違って”表記されることがしばしばあることから思いついたネタです。

「沢田知可子「会いたい」と母音の無声化」2011.8.8
 この記事について、twitterを通じて作詞者の沢ちひろさんに知らせてくださった方がいらしたようで、一瞬、怒られはしないかと冷や冷やしました(汗)。もちろん、私はこの記事に限らず、人の発音を話題にするときにはそれをけなしたりおちょくったりするつもりは全くなく、純粋に音声学的興味から話をしています。

                    ☆

今後書こうかなと思っている話を少し予告してみます(すべて仮題です)。

「チェッカーズ「涙のリクエスト」におけるガ行子音の摩擦音化」

「岡村孝子「山あり谷あり」における声門閉鎖」

「井上陽水「カナディアン アコーデオン」における子音の特徴」

「西野カナの「て」の子音が破擦音化する現象について」

まあ、他の話題の間にぼちぼち書いていくつもりです。なお、あくまでもこれらは「音声学ネタ」なので、説明は音声学の枠組みや用語を用います。そのため、音声学を知らない方には読みにくい記事になる可能性が高いことをご了承ください。




沢田知可子「会いたい」と母音の無声化

沢田知可子さんの代表曲「会いたい」。心を動かされる歌詞ですが、音声学的に見ると面白いことに気が付きます。それは

   「母音の無声化が起こる箇所が多い。」

ということ。日本語(東京方言など)では「無声子音と無声子音に挟まれた母音 /i/, /u/ は無声化する」という原則があります(関西などこれが起こらない地域もあります)。例えば「きた(北)」 /kita/ は「き」の母音 /i/ が無声化し、「くさ(草)」 /kusa/ は「く」の母音 /u/ が無声化します。

その原則に照らすと、この「会いたい」の歌詞にはかなり無声化する箇所が多いのです。もっとも、歌われるときは音楽的な理由で無声化が起こらないことが多いのですが、模範的な朗読をすれば多くの箇所が無声化します。以下では分かりやすくするために歌詞をすべてひらがなで示します。色を付けた仮名が表す音節に含まれる母音が無声化します。



びるがみえるきょうつで たりはくえ ならべて おなじきひをすご

こしのえいごと ばけっと そて わたしはあなたと こいをおぼえた

そつぎょうてもわたしを こどもあかいたよね 「とおくへゆくなよ」と

はんぶんわらって はんぶんまがおで だきよせた

くいくもをひろげた ふゆのよる あなた ゆめのように しんでしまったの

ことしもうみへゆくって いっぱい えいがもみるって

くしたじゃない あなた やくしたじゃない

あいたい



※「つきひを」は「つ」だけでなく「き」の母音も無声化の要件を満たしていますが、直前の「つ」の母音が無声化することと、「き」の音節にアクセントが置かれることもあって無声化しないのが普通かと思います。

※「やくそくした」の2つ目の「く」とそのあとの「し」は私(北海道方言話者?)の内省では両方とも母音が無声化するように思えます。

他のいろいろな歌と比較したわけではないので断定はできませんが、それにしても特に冒頭の部分は無声化する箇所がかなり多いと言えるでしょう。



☆余談ですが、「会いたい」は辛島美登里さんの曲ではありません。沢田知可子さんの曲です。たまーに間違える人がいるので念のため。




ことば遊び:食べ物の立場に立って呼んであげよう

私が通っていた大学は、ことば好きというかことばオタクというか、そういう人たちの集まっているところだったので、ことば遊び的なものが周りにあふれていました。

あれは私が大学1年の頃。合唱団の練習の帰りに、西ヶ原の大学から巣鴨駅に15人くらいで向かっていました。三井銀行(当時)の裏手を通りかかったころだったことまで記憶していますが、先輩方が、

「『焼き魚』は焼く人間の立場に立った言い方だ。焼かれる魚の立場に立って『焼かれ魚』と言ってあげよう。」

なんて(バカな(笑))ことを言いだし、次々と類例を挙げていきました。そのときどんな例があがったかはさすがに覚えていませんが、だいたいこんな感じです。



煮られ魚/ゆでられ卵/目玉焼かれ/おにぎられ/おむすばれ/焼かれ肉/茶碗蒸され/...



まあ、中には訳がわからんものもありますが(笑)、この話をのちに私は授業で「過去分詞の形容詞用法」を説明するときに使うようになりました。



そして、これは今でも忘れられないのですが、あのとき出された例の中の最高傑作はこれでした。

芋の煮られころがされ




上野まな - Feeling
上野まな - My Silly Girls
プロフィール

こばあつ

Author:こばあつ
札幌市出身、埼玉県南部在住。美術大学で英語を教えています。
◆専門◆音声学(主に英語の音声教育、発音表記など)。広くことばやことばの音に関する楽しい話が好きです。
◆趣味◆
【旅行】鉄道旅行と食べ歩き。
【うたを聞くこと】<好きな歌手>上野まな、Perfume、辛島美登里、一青窈、いきものがかり、福原美穂、RYTHEM、太田裕美、溝渕文。<気になる歌手>花菜、山崎葵。ちなみに合唱経験者です。初期の木下牧子作品は思い出深く好きです。
【その他】<好きな女優>上野樹里、宮崎あおい、臼田あさ美、市川実日子、笹峯愛、深津絵里、石原さとみ、松本まりか、ほか

★アメブロで「こばあつの雑記帳(別館)」やってます。
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