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いつからポップス系の歌手は「ガ行鼻濁音」を使わなくなったのだろう?

日本語の「ガ行」の子音は、語頭では《有声 軟口蓋 破裂音》[g] で発音されますが、それ以外の場所では《有声 軟口蓋 鼻音》[ŋ] で発音されるのが“標準”とされており、放送局のアナウンサーは厳しく指導されます(のはずです)。この、鼻音で発音されるガ行は「ガ行鼻濁音」あるいは単に「鼻濁音」と呼ばれています。

例:
 「がっこう」 の 「が」 は語頭なので [ga]
 「しょうがっこう」 の 「が」 は語頭以外なので [ŋa]
 「こうとうがっこう」 は 「こうとう」+「がっこう」 と分かれて 「が」 は語頭扱いで [ga]
 「だいがく」 の 「が」 は語頭以外なので [ŋa]

このほかに助詞の「が」も [ŋa] となります。また、擬音語や擬態語(例:ごろごろ)および数詞としての「五」は語頭以外でも [g] などといった例外があります。

いま上に書いたのはアナウンサーなどが規範とする発音であり、実際には地域差がかなりあります。東日本、特に東北地方の多くではこの通りの発音をしますが、西日本の多くではこのような使い分けがなく、語頭以外でも「鼻濁音」は使わずに破裂音 [g] で発音します。また、かつてこの使い分けがあった地域でも、若年層(というか中年から下)では「鼻濁音」を使わない傾向が強くなってきています。私自身(北海道出身、1965年生まれ)はもともと鼻濁音を使わないのですが、大学で合唱団に入り、歌うときは鼻濁音が必須だったので気を付けるようになりました。

ちなみに、私の「語頭以外のガ行」は、大学2年のときに言語学の先生に指摘されて初めて気付いたのですが、実は鼻音でもなければ破裂音でもなく、[g] の調音点における閉鎖が完全に行われずに摩擦音と化した《有声 軟口蓋 摩擦音》[ɣ] です。少なくとも、発音を意識せずに話しているときはそうです。それどころか、速い発話などではさらに調音点におけるせばめが広くなって、《有声 軟口蓋 接近音》[ɰ] になるときすらあります(そういう発音の人は私以外にもかなりいます)。ちなみに、学生の前で説明するときなどは、私も意識的に鼻濁音を使うことが多いようです。

そんなわけで、個人的には「歌唱中の鼻濁音使用の有無」には非常に敏感なのですが、好きなポップス系歌手のほとんどが鼻濁音を使っていないという現実もあり、「気になるけど気にしない」という態度で歌を楽しんでいます。

                    ☆

さて本題です。ここからは手抜きで申し訳ありませんが、先日ツイッターで一人つぶやいたことを一部修正して転載します。

☆いまや若いポップス系の歌手でガ行鼻濁音を使う人は吉岡聖恵(静岡県生まれ、神奈川県育ち、音楽短大出身)のような例外を除けばほとんどいないという現状だが、私が高校生の頃まではアイドルも鼻濁音で歌っていたような気がする。たぶん歌のレッスンのときに指導されていたんだと思う。

☆かつて「ガ行鼻濁音」を使わない歌手の代表としてユーミンが挙げられることが多かった。「どんな~うんめい~、が~」(「翳りゆく部屋」)と思いっきり破裂音にしているところとか。当時のシンガーソングライターは歌謡曲の歌手のようなレッスンを受けなかったからなんだろうと思う。

☆日本の歌謡界でいつ頃から「ガ行鼻濁音」を使わない方が一般的になったのか興味がある。今度YouTubeをあさって調べてみよう。

☆辛島美登里さん(鹿児島県出身)の場合は、かつてはガ行鼻濁音をほぼ完璧に使っていたのが、ファンハウスから移籍したころから使わなくなったというのが興味深い。ガ行鼻濁音はファンハウス時代のプロデューサーの指導だったのだろうか?

☆...とかいうことを、上野まなちゃんの歌を聞きながら思って、歌を聞くのを中断していろいろ調べだしてしまう。これだから音声学者は...。



ちなみに、上野まなちゃん(兵庫県出身)はかなりの割合で語頭以外の「ガ行子音」を摩擦音にして歌っています。接近音にしているときもあります。でも私が好きだからよいのです(笑)。






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「音声学とJポップ」というカテゴリーを設けました

最近、このブログの記事の左側の欄に示されている「カテゴリ」を整理し、それまで「音声学」として一括してあったものの一部を「音声学とJポップ」というカテゴリに独立させました。そして、久しぶりにその手の記事を書いたところ予想外に反響があったので、調子に乗ってこれまで音声学の授業などでネタとして用意していたものを紹介してみようかなという気持ちになりました。

これまで書いたのは以下の記事です。

「一青窈の「ヤ行」が摩擦音になるという話」2009.8.12
 これはかなりアクセスがあったとみられる記事です。というのも、「一青窈 おやひゅび」のような検索ワードで来た方が多数いらっしゃいました。みんなあの発音気になっていたのね、というわけで、今回、動画へのリンクを入れてみました。

「パフュームの「フュ」の音声学的考察」2010.3.5
これは歌の発音ではなくユニット名の発音について書いたものです。「パフューム」ではなく「パヒューム」と“間違って”表記されることがしばしばあることから思いついたネタです。

「沢田知可子「会いたい」と母音の無声化」2011.8.8
 この記事について、twitterを通じて作詞者の沢ちひろさんに知らせてくださった方がいらしたようで、一瞬、怒られはしないかと冷や冷やしました(汗)。もちろん、私はこの記事に限らず、人の発音を話題にするときにはそれをけなしたりおちょくったりするつもりは全くなく、純粋に音声学的興味から話をしています。

                    ☆

今後書こうかなと思っている話を少し予告してみます(すべて仮題です)。

「チェッカーズ「涙のリクエスト」におけるガ行子音の摩擦音化」

「岡村孝子「山あり谷あり」における声門閉鎖」

「井上陽水「カナディアン アコーデオン」における子音の特徴」

「西野カナの「て」の子音が破擦音化する現象について」

まあ、他の話題の間にぼちぼち書いていくつもりです。なお、あくまでもこれらは「音声学ネタ」なので、説明は音声学の枠組みや用語を用います。そのため、音声学を知らない方には読みにくい記事になる可能性が高いことをご了承ください。




沢田知可子「会いたい」と母音の無声化

沢田知可子さんの代表曲「会いたい」。心を動かされる歌詞ですが、音声学的に見ると面白いことに気が付きます。それは

   「母音の無声化が起こる箇所が多い。」

ということ。日本語(東京方言など)では「無声子音と無声子音に挟まれた母音 /i/, /u/ は無声化する」という原則があります(関西などこれが起こらない地域もあります)。例えば「きた(北)」 /kita/ は「き」の母音 /i/ が無声化し、「くさ(草)」 /kusa/ は「く」の母音 /u/ が無声化します。

その原則に照らすと、この「会いたい」の歌詞にはかなり無声化する箇所が多いのです。もっとも、歌われるときは音楽的な理由で無声化が起こらないことが多いのですが、模範的な朗読をすれば多くの箇所が無声化します。以下では分かりやすくするために歌詞をすべてひらがなで示します。色を付けた仮名が表す音節に含まれる母音が無声化します。



びるがみえるきょうつで たりはくえ ならべて おなじきひをすご

こしのえいごと ばけっと そて わたしはあなたと こいをおぼえた

そつぎょうてもわたしを こどもあかいたよね 「とおくへゆくなよ」と

はんぶんわらって はんぶんまがおで だきよせた

くいくもをひろげた ふゆのよる あなた ゆめのように しんでしまったの

ことしもうみへゆくって いっぱい えいがもみるって

くしたじゃない あなた やくしたじゃない

あいたい



※「つきひを」は「つ」だけでなく「き」の母音も無声化の要件を満たしていますが、直前の「つ」の母音が無声化することと、「き」の音節にアクセントが置かれることもあって無声化しないのが普通かと思います。

※「やくそくした」の2つ目の「く」とそのあとの「し」は私(北海道方言話者?)の内省では両方とも母音が無声化するように思えます。

他のいろいろな歌と比較したわけではないので断定はできませんが、それにしても特に冒頭の部分は無声化する箇所がかなり多いと言えるでしょう。



☆余談ですが、「会いたい」は辛島美登里さんの曲ではありません。沢田知可子さんの曲です。たまーに間違える人がいるので念のため。




パフュームの「フュ」の音声学的考察

先日、こんなツイートをしました。

2010.03.02
【音声学雑談】パフュームの「フュ」を、両唇摩擦音を使って“ちゃんと”「フュ」と言ってるのは、実はのっちである。
posted at 16:16:06

                    ☆

こっから先、理屈っぽくてちょっと専門的な話になります。また、音声記号を使っている関係で、環境によっては正しく表示されない可能性があります(携帯電話等)。

Perfume(パフューム)というユニット名に含まれる「フュ」という表記は、外来語にしか使われません。内閣告示「外来語の表記」では、外来語の表記に用いる仮名の一覧を「第1表」と「第2表」に分け、前者は“外来語や外国の地名・人名を書き表すのに一般的に用いる仮名”、後者は“外来語や外国の地名・人名を原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名”としています。「シェ」とか「ファ」などは前者に入っていますが、「フュ」は後者に入っています。

この「外来語の表記」については問題点が多々ありますが、それは措いておくとして、第2表に含まれていることから推測できるとおり、「フュ」という音(表記ではなく)は日本語の音として定着したものとは言えません。

                    ☆

「フュ」の音について説明する前に、「キャ、キュ、キョ」「シャ、シュ、ショ」などの「拗音(ようおん)」について書いておきます。

「カ行」のうち、「カ、ク、ケ、コ」の子音と「キ」の子音とでは舌の位置が少し違います。(「カ、ク、ケ、コ」もそれぞれわずかに違いますが、ここでは同じとみなします。)「カ、ク、ケ、コ」は、舌の奥の方(後舌面と呼ばれる部分)を、その上の軟口蓋という部分にくっつけて[k]の子音を作りますが、「キ」では舌がくっつく部分が少し前に寄っています。「カ、キ、カ、キ」と言ってみると実感できるかもしれません。そこで、前者を [k]、後者を [kʲ] という音声記号で表します。[ʲ] は、舌が硬口蓋(軟口蓋よりも前の部分)の方に寄っていること(=硬口蓋化)を表す補助記号です。

「カ行」の拗音である「キャ、キュ、キョ」は、[kʲ] のあとに [a], [u], [o] が続いたものです。

「カ、キ、ク、ケ、コ、キャ、キュ、キョ」を音声記号で表すと、

 [ka], [kʲi], [ku], [ke], [ko], [kʲa], [kʲu], [kʲo]

となります。(ここでは日本語の「ウ」の母音を [u] という記号で簡略表記します。)

このように、日本語の子音は

(1)後ろに [i] が続くとき硬口蓋化する。

(2)硬口蓋化した子音に[i]のみならず [a], [u], [o] も後続する(=拗音)

という特徴があります。子音が [i] の前で硬口蓋化するという現象は、英語も含め多くの言語で見られるもので、珍しいものではありません。ただ、日本語の場合、子音によっては硬口蓋化の程度が激しく、他の言語ならば別物とみなされる(国際音声記号でも別の記号で表される)音になってしまう場合があります。

例えば、「サ行」は、「サ、ス、セ、ソ」の子音は、舌先を上の歯茎に近づける 無声 歯茎 摩擦音 [s] ですが、「シ、シャ、シュ、ショ」の子音は、それより舌が若干後ろに引っ込んだ 無声 硬口蓋歯茎 摩擦音 [ɕ](英語などにある [ʃ] とよく似た音)になります。

「サ、シ、ス、セ、ソ、シャ、シュ、ショ」を音声記号で表すと、

 [sa], [ɕi], [su], [se], [so], [ɕa], [ɕu], [ɕo]

となります。

※[k] などの場合に、[kʲa], [kʲu], [kʲo] ではなく、[kja], [kju], [kjo] とする表記もあります。後者は音韻論的見地を考慮した表記と言えますが、ここでは調音そのものについて論じるため、音声学的により妥当な前者の表記を用います。

                    ☆

日本語の「ハ行」のうち、「ハ、ヘ、ホ」の子音は [h] ですが、「ヒ」の子音は、激しい硬口蓋化が起こり、舌の前の方(前舌面)をその上の硬口蓋に著しく近付けて、その隙間から息を出し摩擦の音を発生させる 無声 硬口蓋 摩擦音 [ç] となるのが普通です。拗音「ヒャ、ヒュ、ヒョ」の子音もこれです。

また、「フ」の子音は、上下の唇を著しく近付けて、その隙間から息を出して摩擦の音を発生させる、無声 両唇 摩擦音 [ɸ] となります。この音は「ろうそくを吹き消すときの音」とも言われます。英語などに見られる [f] の音は 無声 唇歯(しんし)摩擦音 といって、下唇を上の前歯に軽く当てて、その隙間から息を出して摩擦の音をさせるので、日本語の「フ」の子音 [ɸ] とは異なります。

したがって、「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ、ヒャ、ヒュ、ヒョ」を音声表記すると、

  [ha], [çi], [ɸu], [he], [ho], [ça], [çu], [ço]

となります。

[ɸ] は本来は [ɸu] というつながりでしか用いられませんでしたが、外来語に限り、

  [ɸa], [ɸʲi], [ɸe], [ɸo]

というつながりでも用いられるようになってきました。(例「ファイト」「フィッシュ」「フェリー」「フォーク」)。

                    ☆

さて、いよいよ「フュ」ですが、これは諸外国語に見られる [f] の子音が硬口蓋化したもの([fʲ])に、[u] もしくはこれに類する母音が後続した外国語音を、日本語に取り入れたものです。諸外国語の [f] は日本語では [ɸ] になりますから、結局、「フュ」を音声表記すると [ɸʲu] となります。

調音のしかたを文章で説明すると、まず、上下の唇を著しく近付けます。そのとき、同時に舌の前舌面を上げて硬口蓋に近づけます(=[ɸʲ])。これは、「フィ」というときの子音の構えと一緒です。「フィ」ではそのあと [i] の母音に移行しますが、「フュ」では [u] の母音に移行します。

[ɸʲu] は、音声学的見地から見れば、特に難しい発音ではないのですが、日本語では未だ定着したとは言えない状況です。いや、むしろ「一部の人たちだけが使っている」と言っても過言ではないかもしれません。ほぼ定着してきたと言える [ɸa], [ɸʲi], [ɸe], [ɸo] と比べると、[ɸʲu] は発音しない(できない)人が多いように見受けられます。これは、本来、硬口蓋化した [ɸʲ] というものが日本語になかったことと関係あるかもしれません。

諸外国語の [fʲu] やそれに類する発音は、かつては、日本語にはもっぱら [çu] すなわち「ヒュ」という形で取り入れられていました。その名残が、英語のfuse→「ヒューズ」です。最近の外来語で「フュ」と書かれるもの(「フュージョン」「フューチャー」等)でも、「フュ」を [çu] と発音する人がかなりいます。これは表記にも表れていて、ネット上では「ヒュージョン」「ヒューチャー」という表記を見かけることもあります。

ちなみに、内閣告示「外来語の表記」では、「フュ」は第2表に含まれる表記、つまり、「原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名」であり、「フュ」の表記に関しては「一般的には『ヒュ』と書き表わすことができる」という注をつけています。

                    ☆

ここから、急に話がPerfumeに戻りますが、Perfumeの3人が自ら「パフューム」と言うのを聞いていると、三者三様であることがわかります。

冒頭に引用したツイートにもあるように、のっち(大本彩乃さん)は「フュ」を [ɸʲu] もしくはそれに近い発音で言っているように見受けられます。

いっぽう、かしゆか(樫野有香さん)は、明らかに [çu] すなわち「ヒュ」と発音しています。上にも書いたように、これはかなり多くの日本語話者に見られる傾向を反映したものともいえますが、彼女の子音が全体的に硬口蓋化する傾向にあることとも関係ありそうです。全般的な硬口蓋化の結果として、前舌面が著しく硬口蓋に近づいて [ç] の子音を生起していると見ることもできるかもしれません。(ちなみに、子音が全体的に硬口蓋化する傾向は、ファンがしばしば彼女の発言に含まれる「ウ段」の音を拗音で表記することにも表れています。例「キモチワリュイ!」「アゲマシュ。」)

あ~ちゃん(西脇綾香さん)は両者の中間的な発音…と言えるかもしれません。もう少し音声学的にみると、おそらくは、彼女の「フュ」の子音は [h] が硬口蓋化したもののようです。すなわち、[h] を発音(息を送る)しながら前舌面を硬口蓋に近づけるが、[ç] の場合ほどには近づけないので硬口蓋での摩擦は起こらないというものです。したがって、彼女の「フュ」を音声表記すると [hʲu] となりそうです。これは、[ɸʲu] と言おうとして両唇のせばめが不十分になっているのか、[çu] と言おうとして舌の上昇が抑えられているのか、どちらかではないかと思います。前者ではないかなという気がするのですが、これは本人にもわからないでしょう。




一青窈の「ヤ行」が摩擦音になるという話

日本語の「ヤ行」の子音 y (国際音声記号を使って音素表記すると、/j/)は、標準的には、次のようにして発音します。

舌の前の方(前舌面=ぜんぜつめん=と言います)を持ちあげ、口の天井(硬口蓋=こうこうがい=と呼ばれる部分)に近づけて、声を出します。実は、この音は、大雑把に言って、母音の「イ」と同じです。ただ、「イ」と違って、一瞬でその構えから後続する母音に移行するので、「ヤ行」の音に聞こえるのです。「イア」の「イ」を限りなく短く言うと、「ヤ」になるのです。

こういう音を、音声学用語で「接近音」と言います。舌が口の天井に接近して作られるので、この名があります。

つまり、日本語の「ヤ行」の子音は、標準的には接近音です。

                    ☆

昨日、NHK-BS2で、6月に行われた一青窈さんのライブ(→こちらの記事を参照)を放送していましたが、改めて、彼女が歌うときの発音上の特徴に注目してしまいました。

それは、彼女の「ヤ行」。標準的な発音の時が多いのですが、特定の曲の特定の個所では、ちょっと違った発音になります。

具体的に言うと、舌(前舌面)が、標準的な「ヤ行」のときよりもっと持ちあがって、口の天井(硬口蓋)すれすれまで近づいて、ギーのようなジーのような擦れる音が発生するのです。

こういう音を、「摩擦音」と言います。口から出ていく空気が摩擦の音を伴うためこの名があります。

日常会話でも、特に強調したいときなどに、摩擦音の「ヤ行」が出現することがあります。また、エフェクトがかかっているのでわかりにくいのですが、Perfume「ワンルーム・ディスコ」に出てくる

♪部屋を片付けて 買い物に出かけ

の「よ」の子音が、摩擦音になっているように聞こえます。

【2011.8.8追加】(該当箇所は0:53あたり)


                    ☆

標準的な「ヤ行」(接近音)も、舌が口の天井すれすれの「ヤ行」(摩擦音)も、どちらも有声音といって、声帯を振動させながら出す音です。

ところが、一青さんは時折、声帯を振動させずに(=無声音で)摩擦音の「ヤ行」を発音することがあります。摩擦音の「ヤ行」を無声音にすると、実は「ヒ」の子音になります。そのため、彼女の発音する「ヤ、ユ、ヨ」が「ヒャ、ヒュ、ヒョ」に聞こえることがあるのです。

一青さんの歌に「あこるでぃおん」という歌がありますが、その中にこんな歌詞があります(わざと、平仮名で書きます)。

♪あこるでぃおん おやゆびの あいだを しゅるり しゅるり ほどけてくよに♪

「おやゆび」の「や」は標準的な発音で歌っているのですが、「ゆ」が無声の摩擦音になっています。そのため、「おやひゅび」のように聞こえたりします。これは、CDでもそうですし、昨日放送されたようなライブでもそうなので、意識的にそうしているものと思われます。(あるいは、この曲のこの箇所を歌うときの感情の高まりがそうさせるという可能性もありますが。)

【2011.8.8追加】(該当箇所は0:56あたり)


これと同じような例を、テレビで耳にしました。今度CDを買って確かめようと思うのですが、宇多田ヒカルさんがカバーした尾崎豊さんの「I LOVE YOU」。ある番組で、それをちょっと聞いてみましょうということになって、流れたら、居並ぶゲストたちが「アイラブヒュー、って歌ってる!」とざわつき始めたのです。この場合も、一青さんの歌が「おやひゅび」に聞こえるのと同じことが起きているのです。

【2011.8追加】


                    ☆

日本語には、もう一つ、接近音があります。それは、「わ」の子音 w (国際音声記号を用いた音素表記でも/w/)です。舌の奥の方(後舌面=こうぜつめん=と言います)を持ちあげて、口の天井(軟口蓋=なんこうがい=と呼ばれる部分)に近づけ、同時に上下の唇も近付けて発音します。

一青さんの「ひとりでに」という歌では、この「わ」の子音が、やはり摩擦音になっています。

♪消えそうに また進んでいった
♪ひとりでに ひとりでに ながれるまで

一青さんは、これらの「わ」を、上下の唇をより近付けて隙間を狭くして発音しているので、スペイン語の母音間での b の音、あるいは、英語などに見られる v の音に近く聞こえます。

【2011.8.8追加】(該当箇所は1:20あたり)


                    ☆

こうやって、他人の発音をあげつらっていると、嫌われるよ、と、学生時代に先輩から忠告をいただいたことがありますが・・・(汗)。

まあ、一青さん好きだし、批判しているわけではないので、許していただきましょう。宇多田さんに関しては、批判どころか、あのテレビ番組のゲストの人たちに「君たち笑うけど、音声学的には不思議でもなんでもない現象なんだよ。ちょっと気持ちが強く入っただけだと思うよ。」と言って、弁護したい気分だったりします。




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プロフィール

こばあつ

Author:こばあつ
札幌市出身、埼玉県南部在住。美術大学で英語を教えています。
◆専門◆音声学(主に英語の音声教育、発音表記など)。広くことばやことばの音に関する楽しい話が好きです。
◆趣味◆
【旅行】鉄道旅行と食べ歩き。
【うたを聞くこと】<好きな歌手>上野まな、Perfume、辛島美登里、一青窈、いきものがかり、福原美穂、RYTHEM、太田裕美、溝渕文。<気になる歌手>花菜、山崎葵。ちなみに合唱経験者です。初期の木下牧子作品は思い出深く好きです。
【その他】<好きな女優>上野樹里、宮崎あおい、臼田あさ美、市川実日子、笹峯愛、深津絵里、石原さとみ、松本まりか、ほか

★アメブロで「こばあつの雑記帳(別館)」やってます。
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